2015年08月16日
永世中立国 スイス
3年ほど前に
勤務していたドイツ系の化学企業の
事業部会議がスイスで行われたことがある。

会場は フラウエンフェルト(Frauenfeld)という
チューリッヒから北東へ鉄道で30分ほど行った
人口2万3千人の州都であった。

日曜日の昼過ぎに
滞在先のホテルに到着して
先ずチェックインを済ませ
荷物を部屋に置いた。
(フラウエンフェルト駅前)

いつものように 周辺の散策をしようと思い
既にチェックインしていた同僚のシンガポール人と韓国人を誘って
ホテルのフロントを通って 正面に出た。
すると モスグリーン色の大型トラックとジープが
ホテルの駐車場に入ってきて
目の前に停まった。
両車両からは
十数名の武装した若い軍人と
隊長らしい30代くらいに見える将校が降りてきて
それぞれの荷物を降ろし始めた。
何が起こったのだろうと見ていると
全員 自動小銃や弾薬などを抱えて
談笑しながら ホテルに入って行き
チェックインを始めた。
後で ホテルのフロントに聞くと
スイスでは 軍事訓練の際に 民間のホテルに宿泊するケースが良くあり
特別なことではないと言っていた。
軍事的なことも日常生活の一部ということであるようだ。
(市内電車)

次の日の休憩時間に スイス人の同僚に確認したところ
スイスは国民皆兵であるので 当然徴兵制を布いていて
自分も予備役で 他国の侵入や脅威があれば いつでも対応できるように
自宅に武器や制服一式を保管しているとのことであった。
そういえば アジアの同僚の国 シンガポールと韓国も徴兵制の国である。
シンガポールは 国が小さく 人口が少ない。
最低限の国防能力を持とうとすると
志願制度では定員を満たせないので
徴兵制になっているという見方を同僚はしていた。
シンガポールは もともと単独で他国と戦って勝てるとは想定していなくて
周辺友好国との軍事同盟が国防の柱だそうだ。
韓国は 未だに休戦状態という現実がある国なので
否応なしに かなり厳しい徴兵制により国防能力の維持を図っている。
会議に参加していたドイツ人によると
ドイツは2011年に徴兵制が中止され(廃止ではなく、復活させる可能性を残している)
現在は実質上志願制である。
これは 軍事予算の効率的な運用と
最先端の軍事技術を維持するための措置というとらえ方である。
徴兵制は 兵の能力のバラつきが大きくなり
教育に予想以上の費用と時間がかかるので
非効率という見方をしていた。
まだソ連が健在であったころの話しであるが
ドイツのケルン近くで
真夜中に 国道を 有名なレオパルド戦車が何台も自走で通過し
頭の上を低空で戦闘機の編隊が通り過ぎていくのを目撃したことがある。
NATO軍の演習の一部であったと後で知った。
日本であれば
真夜中に 街中を
戦車や戦闘機が陸と空で轟音をたてて通過すると
大騒ぎになるだろうが
周りはシンとしていて
プラカードを持っている人もいなかった。
(ホテルの前 牧場 早朝で霜が降っていた)

スイス人が言っていた。
永世中立国という言葉だけでは
単なる気休めにすぎない。
(ホテルの前 朝焼け)

彼は こうも言った。
今日 明日くらいは
平和が保てて 何もなくても
その後に 何も起こらないという保証は
どこにもないし
誰も保証はできないだろう。
フラウエンフェルトは 自然に囲まれ
とても牧歌的な街であった。
(ホテルの前 牧場)

そこで たまたま目にした光景と
人々の考え方は
日本のものとは かなり違っていた。
(フラウエンフェルト 市街地)

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